レピュテーショナル・リスク

レピュテーショナル・リスクの重要性

このリスクは、文字通り企業の評判の毀損・・・企業の社会的信用・存続に関わるリスクで、最も重要なリスクと言えます。具体的には、企業をとりまく次のようなステークホルダー(利害関係者-いかなる形でも企業の存続や発展に影響を与える組織、ないし人)の企業への評価が失われることです。
多くの場合、経営者の辞任、株主代表訴訟による経営者個人への損害賠償請求へ発展します。

ステークホルダー

  • 顧客
  • 従業員
  • 取引相手企業
  • 規制当局
  • 社会・環境問題等の活動家
  • メディア
  • 株式上場先取引所
  • 投資家/株主・・・等

企業は、これら利害関係者の期待、要望に耳を傾け応えていく必要があります。
特に、企業が成長を遂げ、社会的地位が上昇すればするほど、この必要は大きくなるといわれています。

ステークホルダーとしての従業員

特に注意が必要なのは、利害関係者としての従業員です。現在、雇用関係、働き方など大きな変化が見られます。これらの人は、企業を内部から評価しています。
企業は、これらの人々が、健康で将来に不安がなく高いモチベーションをもって働いてもらえれば、それだけ高い業績が期待できます。これは、リスクマネジメントの観点から「アップサイドリスク」と言えるものです。
一方、将来に不安を持ち社内環境も悪い中で仕事に従事すると、業績に重大な影響を与えるだけではではなく、これらの人々の評価が自然と外部に漏れ、企業のレピュテーションが徐々に失われるではなく、重大な内部告発につながる場合さえあります。

この従業員関係の社内環境によるモチベーションの差は、非常の大きいものであり、この問題に十分な注意と資源の投入が必要であります。経営者が払うべき最大の関心事の一つといえます。

リスクの発生

ソーシャルメディアの発達によりクローズアップされてきたリスクと言えますが、
このリスクは、他のリスクの発生により二次的に発生するもので、それぞれのリスクを管理する必要がありあます。

レピュテーショナル・リスクに陥る具体的な例は

  • 危機発生時に不適切な/不用意な発言をした
  • 真実を隠した/うその発表をした
  • 労働環境が悪く内部告発された
  • 重大なコンプライアンス違反が発見された
  • リスク発生時に、その企業の社会的評価に比して、非常に低レベルの安全対策しか行っていなかった(リスク管理の失敗)

等があります。
注意が必要なのは、社会の大きな変動により、今までは許されてきた慣行・ルールが急に許されなくなる場合があることです。
特に各業界ともに、順守事項が数々あります。この中には、罰則のない推奨事項も多くあります。これらの中のある事項が、社会的認識の変化により突然あるキッカケ(多くは、この推奨事項に係る事故)で、絶対遵守事項変化することがあります。この種の変化の兆候は、特に同業他社の動きなどよく注意をしていると分かる場合がありあます。コンプライアンス関係には、特段の注意が必要です。

リスクの軽減

このリスクは、他のリスクの発生により二次的に起こるものです。従って、それらのリスクの管理が、このリスクの軽減に繋がりますが、特に注意すべき分野を挙げると以下になります。

  •  社会的・商業的道徳
  •  守るべき規則、法律の順守(コンプライアンス)
  •  顧客の保護
  •  従業員(雇用形態は問わず)への公正な扱いとモチベーション喚起
  • 取引先、特に下請企業に対する誠実な対応
  •  社内のリスク・カルチャ―の涵養

上記の内、特に重要なのは、最後のリスク・カルチャーです。このリスク・カルチャーは、企業文化の一つと言えます。企業には、組織としてその数々のリスクに対応する不文律いわゆる暗黙知といえるものがあります。どのようなリスクマネジメント体制を作ろうとも、それを守るのは、組織内の人間ですから、このリスク・カルチャーのレベルにより、企業のリスクマネジメントレベルが大きく異なることになります。

リスクのモニタリング

この企業のレピュテーションは、通常、徐々に毀損していきますから、自社の評判を常に意識し、組織のすべての段階で、モニタリングしていく必要があります。

その対策は、

  1. BCP以外に危機管理対応プランを予め作成し準備をする
  2. 顧客からのクレーム等をモニター分析する(顧客満足度)
  3. ソーシャルメディア等で自社の評価をモニターする
  4. 社内の不平不満に敏感になる
  5. 社内で発生する事故の情報を集積分析し社内で共有する